「修太郎さん、管理係の中本さんが……修太郎さんにはどんなにアプローチしても自分には決められた女性がいるから、と相手にして頂けなかったと話しておられました。婚約者の方がいらっしゃるんじゃないか、って。それって佳穂さんじゃ……?」
私自身、中本さんの言葉で、私にもいずれ結婚を定められた男性がいらっしゃるのだからよそ見はいけない、と自分に言い聞かせようとしたのだ。
そうして修太郎さんと思いを通わせることができるようになってからも、ずっと“修太郎さんの婚約者”という存在が、澱のように心の底にわだかまっていた。
修太郎さんには私以外の想い人がいらっしゃる、と。
でも、今の修太郎さんのおっしゃり様だと、それは何だか矛盾している気がして。
「ああ、それは……佳穂のことじゃありません。日織さん、僕は貴女のことを想って……他の女性からのお誘いは全てお断りさせて頂いていました。許婚がいると言うのも嘘ではありませんでしたので、それを利用して嘘をついていたことは認めます。ですが、前にも申し上げたように、僕は貴女以外を自分の横に、なんて考えたことはないんです。それこそ貴女という女性を知った、十七の時からずっと。日織さんが手に入らないなら結婚なんてしなくてもいいとさえ思っていました」
女性、と表現されるとどこかくすぐったい気持ちがしたのは……出会った時の年齢が四歳と幼かったから、だけではなくて。
今でも佳穂さんと比べると随分子供っぽい私なのに、と思ってしまったから。
「私、こんなに子供っぽいのに……修太郎さんはお優しいです。一人前の女性として扱ってくださるのですから」
自信なさげにそう言うと「日織さんは僕を怒らせたいんですか?」と言われてしまった。
実際見上げた修太郎さんのお顔はとても怖くて。
私自身、中本さんの言葉で、私にもいずれ結婚を定められた男性がいらっしゃるのだからよそ見はいけない、と自分に言い聞かせようとしたのだ。
そうして修太郎さんと思いを通わせることができるようになってからも、ずっと“修太郎さんの婚約者”という存在が、澱のように心の底にわだかまっていた。
修太郎さんには私以外の想い人がいらっしゃる、と。
でも、今の修太郎さんのおっしゃり様だと、それは何だか矛盾している気がして。
「ああ、それは……佳穂のことじゃありません。日織さん、僕は貴女のことを想って……他の女性からのお誘いは全てお断りさせて頂いていました。許婚がいると言うのも嘘ではありませんでしたので、それを利用して嘘をついていたことは認めます。ですが、前にも申し上げたように、僕は貴女以外を自分の横に、なんて考えたことはないんです。それこそ貴女という女性を知った、十七の時からずっと。日織さんが手に入らないなら結婚なんてしなくてもいいとさえ思っていました」
女性、と表現されるとどこかくすぐったい気持ちがしたのは……出会った時の年齢が四歳と幼かったから、だけではなくて。
今でも佳穂さんと比べると随分子供っぽい私なのに、と思ってしまったから。
「私、こんなに子供っぽいのに……修太郎さんはお優しいです。一人前の女性として扱ってくださるのですから」
自信なさげにそう言うと「日織さんは僕を怒らせたいんですか?」と言われてしまった。
実際見上げた修太郎さんのお顔はとても怖くて。



