あなたに、キスのその先を。

健二(けんじ)から修太郎(しゅうたろう)の話を聞かされたとき、私、その子と再会できるようにしてみたら?って言ったの」

 顔をお上げになられると、ややして佳穂(かほ)さんが健二さんの言葉を引き継ぐようにそうおっしゃった。

「修太郎ってね、変なところで奥手だったりするの。周りからお膳立てしないと無理だなって思っちゃって」

 修太郎さんにちらりと視線を流されてから、佳穂さんが困ったように微笑まれる。

「俺、いつもは父の仕事の補佐みたいなことしてるんですけど……今回の件は親父を利用させてもらいました。親父の下でばかり働いてたんじゃ井の中の(かわず)になる。数ヶ月でいいから市役所(そと)に出させて欲しいと頼みこんだんです。ついでに、その勉強がてら許婚(いいなずけ)の動向も見極めたいから短大を卒業した日織(ひおり)さんを同じ場所に引き込んで欲しい、とも」

 出来れば兄のいる課がいい、許婚に関しては兄に全権を(ゆだ)ねる形で他の男を寄せ付けないように監視させて欲しいとも申し添えておきました、と健二さんはおっしゃった。

「兄には許婚のことを知りたいので協力して欲しい、とだけ話しました。俺が自分のために何かしていると知ったら逆に萎縮しそうな気がしたんで、この計画の真意はついさっきまで()()()()()()()でした」

 お父様である天馬(てんま)氏が、どこまでそういう、言わば公然とはやってはいけないことをしてくださるか分からなかったけれど、そこはある種の賭けだったこと。

 頼んだとおりにことが運ばなかった場合、健二さんご自身が少し積極的に動こうと思っていらしたことなどをお話になる。

 けれど、結論から言うと、すべて思惑通りにいきました、と健二さんは苦笑なさった。

「幼い頃から俺たちのことなんて一切興味を持っていない男だと思っていたんですけど……こうしてみると案外子供には甘かったみたいです」