修太郎(しゅうたろう)、久しぶりね」

 親しげにお互い下のお名前を呼び捨てにし合うほどの仲なんだ。

 そう思うと、私はいたたまれない気持ちになった。

 思わず健二(けんじ)さんの後ろに隠れようとふらりと揺らいだら、彼女――佳穂(かほ)さん?――に目敏(めざと)く見つけられてしまう。

「そちらが……健二の許婚(いいなずけ)のお嬢さん?」

 佳穂さんの視線を受けるように、健二さんに背中を押されて前方に押し出された私は、穴があったら入りたい気持ちで一杯だった。眼前のすらりと背の高いスタイル抜群の彼女に比べたら、私は胸もペタンコ、おまけに背も低い、チンチクリンな子供みたいで。

 そう思ったら、知らず身体が震えてしまった。

 そんな私を、佳穂さんが値踏みをするように見ておられる……気がした。

「……は、初めまして。ふ、藤原(ふじわら)日織(ひおり)と……申し、ます……」

 その視線から逃れたい一心で何とかそれだけを言うと、私は手にしたバッグの持ち手をギュッと握りしめてうつむいた。

 と、そんな私の手を、いつの間にかそばに来ていらした修太郎さんが、そっとにぎってくださって。

 私は修太郎さんの行動が信じられなくて、目を見開く。その表情のままに彼の横顔を見つめたら、無言で微笑みかけていらして。そのお顔が「大丈夫だから」と言ってくださっているようで、私は嬉しさと申し訳なさで、鼻の奥がツンとするのを感じた。

 だって目の前にいらっしゃるのは……修太郎さんの許婚のかたかもしれないのに……なのに修太郎さんはそれを気にしなくていいとでも言うように私を気遣ってくださって。こんなにして頂いて、これ以上のことを望むのは、いけないことに思えてしまった。