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 それが、つい三十分くらい前のこと――。

 腕時計を見ると、さっき見たときから五分ほど長針が進んでいた。

 と、
日織(ひおり)さん」
 突然、後ろからポン、っと肩を叩かれた。振り返った私は、スーツ姿のその方を見て、瞳を見開く。

 だってそこに立っていらしたのは、いつもは作業服姿のはずの――。


(しゅう)太郎(たろう)、さん……?」

 え? どうして修太郎さんがここに?
 しかも、見慣れないスーツ姿なのは……何故?

 私、健二(けんじ)さんと待ち合わせをして……。なのに……え? え?

 思わず立ち上がって一八〇センチある長身の彼を見上げたら、修太郎さんの後ろからもう一人、彼より気持ち背の低い男性が現れて。

「ちょっと兄さん、何で貴方が先に彼女に声をかけるんですか……」

 話がややこしくなるでしょう、と言いながら、呆れ顔で修太郎さんを(たしな)めるその人も、私が存じ上げている方で。

 え? でも……え? なに? どういう、こと?

 いつもはお二人とも作業服姿なのに。修太郎さんと同じくスーツにビシッと身を包んだその方を見て、私はますます混乱する。

 何故ならそこにいらしたのは、臨職(りんしょく)仲間の

「――高橋(たかはし)、さん?」

 だったから……。