日曜日。
 今日私は、市内では少し高級感のある、とあるホテルのロビーで、十一時に健二(けんじ)さんとお会いすることになっている。

 腕時計に視線を落とすと、お約束の時間まであと二十分もあって。

(早く着きすぎてしまったかな……)

 ロビーに置かれたフカフカのソファに腰掛けて、行き交《か》う人々を見回しながら、私は緊張で押しつぶされそうだった。

修太郎(しゅうたろう)さん……)

 待ち合わせのお相手が修太郎さんだったなら、どんなにいいだろう。

 ふとそんなことを思ってしまって、私はフルフルと首を振った。今から許婚(いいなずけ)のかたにお会いしようというのに、別の男性のことを考えるなんて良くない。例えそれが、自分を解放して欲しいというお願いに上がるためだとしても。


 修太郎さんには、日曜に健二さんとお会いするようになった旨はお伝えした。でも、あえて場所や時間などはお教えしなかった。

 もしもそれらをお話してしまったら、私は心の片隅で、修太郎さんが会合()の場に来てくださるのではないかと期待してしまうと思ったから。

 自分でちゃんと解決しないといけない問題に、修太郎さんを巻き込んではいけない。