「なんだい?」

 穏やかに聞いていらっしゃるのへ、

「お父様は健二(けんじ)さんへはいつも何時ごろに連絡をなさっておられましたか?」

 聞きながらスマートフォンを持つ手に思わず力が入ってしまう。

 ギュッと指先が白くなるぐらい強く握り締めていたら、お父様がそっとその手に触れていらして。

「そんなに構えることはないんじゃないかな? 日織(ひおり)がかけたいときにかけたんで大丈夫だと思うよ? 都合が悪ければその折には応答なさらないだけだよ。ほら、携帯には着信履歴が残るだろう? お手隙(てすき)になられたらそれを見て折り返してくださるんじゃないか?」

 そこまでおっしゃってから、「不在着信になった場合はショートメッセージでこの番号は日織だよ、と送っておけば必ず掛け直してくださると思うし。ショートメッセージの送り方はわかるね?」と頭を撫でてくださる。

「多分……大丈夫です」

 私はお父様の言葉に、肩の力をふっと抜くことが出来た。

 緊張はするけれど、よく考えてみれば健二さんと私、対等の立場のはずだもの。何をそんなに萎縮(いしゅく)する必要があるんだろう、と思い直す。

「お父様、ありがとうございます。早速かけてみようと思います!」

 私はお父様に会釈(えしゃく)をすると、

「失礼します!」

 そう笑顔で言って、書斎を後にした。

 お風呂まではまだ時間がある。
 今から健二さんに電話をしてみよう、と思った。