そうおっしゃってから、私の唇に指の腹をそっと滑らせていらっしゃる。

日織(ひおり)さんこそ、こんな僕で本当に構わないのですか?」

 それからとても不安そうにそう問いかけていらして。

 私は、修太郎(しゅうたろう)さんの手をぎゅっと強く抱きしめると、彼の目をまっすぐに見つめてにっこり微笑んだ。

「もうっ、愚問ですよ? 修太郎さん。私が好きなのは修太郎さんだけだと何度もお伝えしたじゃないですか」

 私が、普段では考えられないくらいはっきりとそう意思表示できたのは、いつもは自信満々の修太郎さんの手が、微かに震えているのを感じたから。

「それに……。キスのその先も……、私だけでは分からないです。すべて済んだら……。その、あのときの約束、果たしてくださるんですよ、ね?」

 小さくつぶやくようにそう付け加えたら、修太郎さんが驚いた顔をなさった。

 そうしてふっと微かに声を出してお笑いになると、
「日織さんの口からそんなおねだりが聞けるとは思ってもみませんでした。……これは弱音を吐いている場合じゃないですね。――僕も、頑張らないと」

 そうおっしゃって、今まで見たなかで一番最高の笑顔を見せてくださった。

 彼のその笑顔を見ただけで、私の胸はギュッと痛みを感じるぐらい強く高鳴る。

 私も、修太郎さんのためなら頑張れる。そう思えた。