あなたに、キスのその先を。

 落ちなくて良かったです、という言葉とともに手渡されたスマートフォンを受け取りながら、市役所から向かわれたにしてはお早いお着きだな、と驚いてきょとんとする。

 するとその表情に気づかれた修太郎(しゅうたろう)さんが、
「ほら、日織(ひおり)さん、僕と同じキャリアにするとおっしゃってらしたから。――庁舎に一番近いdocono(ドコノ)の店舗はそこのショップでしたので、もしかしたらお会いできるかな?と思って来てしまいました」

 これではまるでストーカーですね、と小さく付け足して苦笑なさる彼に
「修太郎さんなので問題ないです。というより予定外にお会いできて、とっても嬉しいです」
 と微笑んだら、途端片腕でギュッと抱き寄せられた。


 それにドギマギしてしまった私は、結局荷物のことを言いそびれてしまった。