帰宅後、私はすぐにお風呂に入った。

 いつもならテレビを見たり読書をしたりして少しくつろいでから入浴するのを、今日だけはお母様に「仕事で汗をかいてしまったので」と嘘をついて先にお湯を頂く算段をした。
 会議室であった恥ずかしいあれこれを、禊《みそぎ》で洗い清めたいような、そんな気持ちになってしまったから。

(……嘘をついてしまってごめんなさい)

 心の中で謝りながら、それでもさすがに本当のことは絶対に言えない、とも思って。

 脱衣所で服を脱いだ私は、鏡に映った自分を見て、あまりの恥ずかしさに動きを止める。肌に点々と散る(あか)く小さな鬱血(花弁)。付けられた瞬間の、チクリと刺すような痛みまで思い出されて、思わず頬が(しゅ)に染まる。

 修太郎さんに、(うら)(ぶし)のひとつも言えずに一日を終えてしまったことが心の底から悔しい、も思ってしまった。