今日は、朝から嫌なことが多かった。
双子の妹に数回間違われ、覚えのないイタズラ被害で怒られた。
間違えるのは仕方がない。私と妹はとてもよく似ているから
でも、違うって言っているのだからすこしはこっちの話も聞いてほしいものだ。

私はキリア。
妹はミリア。
双子で、よく似ていて、とても仲良し。
小さい頃からいつも一緒で、妹と双子として生まれてきたのは私の誇り。

でも、間違われるのは嫌。
怒られるからじゃない。
『私を見てほしいから』

そんなこんなで、今は夕方。
窓からはオレンジ色の光が入ってきて、感傷的な気分になりがち。
朝こら落ち込んでいた私も例に漏れずぼーっと窓の外を見ていた
何かがあるわけじゃない。むしろ、自然物以外には何もなかった。

しばらくぼーっとしていると背後でドアの開く音がした。
私は振り向かない。得に興味はなかったし、できればほって置いて欲しかった。
「お、ミリア。何してるんだ?」
ドアを開けた主は声をかけてきたけど、朝から間違われて気分が悪かった私にはまた間違われたことが耐え切れず返事をしなかった。
「……また返事をしないつもりか。授業中もそうやって返事をしないで…。声なくしちゃったのか~?」
私はミリアじゃないから授業中のことまではわからないけど、からかうような声に頭に来てゆっくりと振り返った。
そこには、私たちの英語の男性教師がびっくりした顔で立っていた。

「え?!どうした??」

男性教師、島田正義(しまだまさよし)先生は慌てて寄ってきてすこし膝を曲げて私の顔を覗き込んだ。
目線があって、島田先生の顔がまっすぐ目の前にある。
先生は私の顔を確認すると、ポケットテイッシュを差し出した。

「とりあえず、涙拭いて。悩みがあるなら、聞くぞ?」

私はやっと自分が泣いていることを自覚して、先生のくれたテイッシュを一枚取り出すと流れた涙をテイッシュに吸い込ませた。

「…せんせい。私、ミリアじゃないので授業中のことはわかりません。」

涙を拭いて笑顔出そう伝えると、先生は一瞬びっくりしたあと越しを曲げて頭を下げた。
「ごめん!!あまりにそっくりだったから、間違えてしまって…。本当にごめん。」
先生の必死さに今度は私がびっくりしてしまった。
間違われることが嫌いなわたしが『またか』と呆れているのに、こんなに必死に大事のように謝ってくれる人を始めてみた。

「…っ。だ、大丈夫ですよ。慣れて、いるので。」

せっかく吸い込ませた涙が、また溢れてきそうになってたどたどしくも言葉を繋ぐいだ。
先生は顔だけあげて目だけで私を見ると悲しそうな顔をして、もう一度ごめんと言った。
そうしてしゅんとしたまま、先生は部屋での用事を済ませドアの方に向かう。
最後にまたこちらを振り向いてた。

「ごめんな」
「だいじょうぶ。もう泣いてないですよ」
「よかった。ありがとう」

先生が部屋から出て行くと、私は理由のわからない感謝の言葉を繰り返し、理由のわからないドキドキに、返すタイミングを失ったテイッシュをそっと当ててみた。

「……ちょっと、必死すぎゃない?」

私は自分の声に自分がにやけてるのを感じて、夕日に負けないくらい頬がオレンジになっているのを悟った。