「にぼし、というのは、俺の固有な名前じゃない。人間、と呼ぶようなもの」
セグロさんは、私に説くようにしゃべる。
「あっ。
ごめんなさい!
でもお名前をお聞きできて、嬉しいです。
あの、私、まず、どうしてあなたと、こんな、ふうにお話して……」
「それほどにぼしに対して想いを向けてくれたということ、嬉しく思う。
だから気がついたんだよ。熱心に袋を見ている子がいるなって」
やっぱり、間近でみるセグロさんはカッコいい。私は改めてそう思った。
お守りを握りしめて、
言うぞ、と決意する。
「私、あなたが……」
「ま、セグロも固有名詞ではないが。他に、名前がないんだ。……え?」
「あ、あああ」
カアアと顔が熱くなる。
ほんとは逃げ出したいけど。
ええい! やけよ!
「セグロさん、好きですっ!」
彼は、見開けない目のかわりに、 ただ黙って聞いていた。
拒絶が怖い。
きみは人間だとか、無理だと言われるかもしれない。にぼし子さんとお似合いかもしれないけど。



