授業のあとは昼休みだった。
チャイムがなると、とりあえず人気がないとこでお弁当をいただくことになっていたけど、あまり、食欲がない。
 頭のなかは、にぼしに告白するかしないかで揺れている。

そういえばにぼしって、何が好きなんだろう……
私は、好きな相手のことを何も知らないことに気がついた。

「にぼしこを買ってこいってさー、マジ、だる。
猫用のにぼしじゃだめかねぇ?」

涙がばれないように廊下をうつむいて走っていたら、そんな男子生徒の声が聞こえて、私ははっと顔をあげる。

にぼし子。



そのさらに隣の男子が
「にぼしとお前、お似合いだよな」なんて言う。

「ばっか、お前、にぼしにお似合いなのはにぼし子ちゃんだろ?」

ハハハハ!と二人は笑いあいながら過ぎ去る。



彼女、いるんだ……


 ずきん、ずきん、ずきんずきん。
胸がいたい。

にぼしとお似合いの、にぼし子のことが頭から離れない。
どんな子なんだろう。
私より、素敵な子だろうな。

授業なんか投げ出して、にぼしを食べるために家に帰りたかった。