運命の歯車


『今日が、あなたが最初で最後』



 朝、私はお守りを握りしめながら、にぼしの居なくなった部屋を見渡した。
あの日から、
味噌汁ににぼしを入れていない。

「わかってた、わかってたのに! あなたが居なくなるのは、私……」

 にぼしは、もともと、お味噌汁にするつもりだった。

だけど同時に、食べても消えないんじゃないかって、そんな、矛盾したことを思う自分がいた。


そんなことはない。
あるはずがないのに。


一夜きりの逢瀬は、初恋の味と、涙の味がした。


―完―