運命の歯車

……
……







「冷たい?」

私が声をかけると、セグロは穏やかな声で答える。
「いいや、あぁ。心地良いぜ」

「ゆっくり、浸ってね」

「ふっ。やっぱり、少し、慣れないわ」

「そのうち、馴染んでくるよ」

静かなアパートの室内に、水音が響く。
誰も、二人を遮らなかった。
セグロさん、は、ふわふわと嬉しそうに、私から逃れて泳ぐ。

「しかし、昨日も味噌汁なら、俺は、ファースト味噌汁じゃないんじゃないか」

「今日のために、味噌汁に使わずにあなたをとっておいたの。確かめたらもったいなかったから」

「ははは、なるほど」


その小さな箱庭の中は、やがて、だんだん熱を帯び始めた……