運命の歯車


「でも今日ね……スーパーであなたに、会ったとき、私、なぜか吸い寄せられるようにレジに走ってた」

運命だった。
パッケージ品なのかすらわからない、絶対このにぼしだって確信もなかった。
あの青年ともあれからすぐ別れて、聞けなかったし、また会うことはなかった。

なのに。

「昨日、お味噌汁を作ろうと、そのにぼしを開けたら、涙がこぼれたわ。

あの香り。
あの色。


あの日と、おんなじ」




夜、にぼしを食べた。

その瞬間、恋に落ちてしまった。

美味しかったのだ。

にぼしを食べることの喜び。
にぼしを愛することの喜びを知った。


私は、やっぱり、にぼしを愛している。
何度も探して、こんなに嬉しくて。


その想いの強さを、深く知った。



私は帰宅しておやつがわりにと味噌汁用だった袋を手にしたそのときから……
恋は始まる。

運命の歯車のなかで、私たちは、出会った。


「好き、好きなんです!
セグロさん。
会えて、嬉しかった」

たとえ、にぼし子さんが居ても、

私。

うああああん!

私は泣いていた。
にぼし子さんと幸せになって欲しい。
ただ、私は。私は……

「にぼし子? おいおい、にぼし粉のことか。 あれはにぼしをもとにした粉末だよ」

「え?」

涙が、ひっこむ。