運命の歯車

「こうして、私は、無事に家に帰ることが出来たの」

私はこれまでの全てを、途中何度も涙ぐみながらも語った。
今も、忘れていない。
私が愛したひと。
ううん、にぼし。

手のひらにいる、そのにぼしは、「そうか……」と答えた。

「残念だが、それは俺じゃないな。うちの家系の誰かだろう」


「それでも……私、私、会いたかった。
ごめんなさいって、もう少しお話すればよかったって」


セグロは、私に言う。

「そいつは、お前の力になりたかったらしい。

それができて、うかばれてるさ」



そうかな。
だったらいいな……

それとあの青年と田中さん。今、どうしてるのだろうか。


「お前がにぼしを愛したのはわかった、だが、それは俺じゃない」

「まって、続きがあるの!」

それから私は、あのにぼしに会いたくて毎日近所のお店を回った。

ううん。
いないって、わかってる。なのに、どうしてか、足を運んでしまう。



あの感触を、忘れたくないから。

私も誰かに、お味噌汁をつくれるようになろうと決意したから。
 にぼしが売られるコーナーを、放課後は必ずチェックしていた。
だけど、買う勇気が出る、ピンとくるものは、何ヵ月と、何年と現れなかった。