運命の歯車


中から小さなにぼしが顔をだした。

「やぁ。無事でよかったね」
とくん。

「俺は、しがない、にぼしだよ」

にぼし、は銀色のボディを見せつけながら私に挨拶する。にぼし、さん……


「彼から、きみのことを任されたんだ。だから俺は、この味噌の海を通り、ここまで来た。
さあ、食べてくれ」

「でも、食べてしまったら、貴方は……」

「そのくらい覚悟できてんだよ! なめんな」

「……っ」

なんて雄々しいのだ。
私の両目から涙が溢れる。

「おいおい、しゃあねーやつだな。接種したばっかの水が流れるだろ」

「田中さーん! 田中さああん!」

「……ああああっ。にぼしさん、嫌、せっかく、せっかく会えたのに!」


運命だったのだ。

こうやって、出会えたこと。

「おい、そんなに泣くなよ。
別れるんじゃない、お前と一緒になるだけだ」



にぼしさんが、水筒から私を困ったように見つめる。
なかなか決心がつかないからだろう、諭すように彼はゆっくりと私に語りかけはじめた。