会社で起こった事件からまさかこんな展開は想像もしてなかった。

自分に足りない所や今後の事も含め彼と話し合えたのは良かったけれど。
 それで人間として成長した感覚もなく多分そんな変わってない。

 気づかないで数年後にサラッと人から言われるよりは良いのかも?
そういえばお泊り飲み会をした2人は元気にしてるだろうか。
 それと私の家族たち。甘えてえてしまうから帰るのは控えていたけど、

 新しい部屋が決まったらお土産を沢山持って帰ろう。


「悠人君すごいですよね。占いの仕事で雑誌にコラムまで書いて。
実は予約の取れない超人気の占い師なんだそうですよ」
「……」
「でも10分で1万円か。もう少し安くならないかなぁ。占いとか興味
なかったけど彼は本物ですから金運を見て欲しいなぁなんて」
「彼に部屋も選んでもらえば良いんじゃないか」
「あ。良いかも。風水的に良い間取りとか一時期先輩がハマってました」
「彼氏も選んでもらうと良いね」

 彼がニコーっと笑う時、それはメチャクチャ怒ってる時。
私はとても鈍感だけどそれは分かるようになった。
 
 仕事を終えてその足で近場の物件を見に行こうと乗り込んだ車内。

「や、やだな。彼氏は創真さんだから選ぶ必要ないです」
「そうなんだ。へえ」

 おじさんはすぐ怒る。そしてその頻度も上がった気がする。
 今まで以上に「本気」になったから?かも。

「慧人君もまさか会社の中のコンビニでバイトするとは。
でも彼らの部屋と会社とバイト先全部近い距離ですもんね」
「彼らに詳しいな」
「警戒するばかりじゃ何も出来ないし緊張するから。だからこっちから
話しかけて私のことも少しは知ってもらって。仲良くなれなくても
いいからせめて認めてくれたらいいなって」
「彼らの許可なんて必要ない。問題なのは私と君の気持ちだ」
「……はい」

 確かにそれはそう、なんだけど。

 日本に期間限定とはいえ残る事になった甥っ子君たち。
彼らに会う度に緊張していたら疲れる。叔父さんの側に陣取ったし。
やはり何か作戦を考えているのでは?と思ったけれど。
 
 近づいても警戒せず私の問いかけに気さくに返事をしてくれた。
 それが本心か演技かは私には読み取れない。

「君の場合は両親がまだ居るか」
「親は関係ないですから」
「そうかな。無理しなくていいよ、親の顔色を見てしまうのは
子どもの習性のようなものだ。私もそうだったから」
「創真さんのお母さんはどんな人って聞いたら駄目?」
「世間的には良い母親ではないんだろうね。不倫で身ごもり家を追い出され
その子どもごと年上の富豪の世話になって最後は後妻に収まった女」
「怖い人?」
「怒られた事はない。非常に美しく、優しい、……けど可哀想な人」
「……」
「力は私よりも強かったが一切使うことはなかった。使っても良い事
なんて何も無いからと。全くそのとおりだ。
私は若気の至りで力を使ってから今までズルズルと散々だからね」
「九條さんから電話まだ来るんでしょう?とったほうが」
「もう関わらない。今度こそ絶対だ」

 とうとう着信拒否して会社でも徹底して拒否。連絡するなら
令状もってこいとまで言ったそうで秘書のお姉さんが驚いていたと
先輩から聞いた。
 車内な微妙な空気になってしまった所で目的地に到着。

「綺麗なエントランス」
「咲子」
「はいっ」

 鍵は既に預かっていて自分たちだけで見ても良いのだそうで。
どんな知り合いなのかと不思議に思いつつ、エレベーターで上がり。
 開いている部屋番号を教えてもらって中へ。

「君はこの部屋でどうかな」
「うわ。広い…」
「立地条件は前の部屋より多少悪くなるが無理は無い範囲だろ。
私はどこでも良いんだ。君の意見は?」
「家賃が心配」
「安心していい。君の給料と一緒に上がるシステムにしてあげるから」
「あ……ありがとうございますぅ」

 つまり家賃も上がるって意味ですよね、それ。相場よりは安いとはいえ
上がるのは心臓にあまりいい言葉じゃない。
 綺麗で広い部屋に審査もなく住めるなんて嬉しい事だけど。

「他似たようなものがあるんだけど。どうする」
「ここがいいです。コンビニも近くにあったし」
「分かった」

 キョロキョロと部屋を眺めてうっとりしている私を他所に、
彼はポケットからスマホを取り出して電話をする。
 話の感じからして早速不動産屋さんに連絡しているんだろう。

 社長はともかく。
 新人社員の私の住処が毎回豪邸で良いんだろうか?

「……ん?私のスマホ?」

 少し離れて見学していたらカバンからバイブ音。時間的にもしかして
会社からかもしれないし、家族の可能性もある。番号は僅かな人しか
 知らないしスマホを取り出してすぐに出た。

『あ。よかったー出てくれた』
「九條さん?何で私の番号」
『どうにか秋海棠君に電話出るように仕向けてくれないか?』
「私にはそんな事出来ません」
『警察と事件解決とか君好きだろ』

 ギクリ。

「本人が嫌だって言ってるのに」
『とある大富豪の館に10人ほど身内が集まってパーティをした。
けどその夜に突然富豪が苦しみだしてそのまま死亡。容疑者は家政婦の他、
揃いも揃って怪しい身内。アリバイもあやふやお手上げでさ』
「何ですかそのアガサクリスティもどき」
『気になるだろ?頼むよ』
「だけど」

 あんな辛そうにお母さんのことも話してくれたのに。
 私の好奇心で彼をどうにかしようなんて。そんな酷いこと。

『咲子ちゃんが彼と風呂入ってくれたら手伝ってくれるから。
ちょっと我慢してくれたら救われる人が大勢居るんだよ?』
「そんな事で?」
『そうだよ。だからお願』

 その瞬間手から消えるスマホ。後ろに居た人に奪い取られただけだけど。

「やけに楽しそうだ」
「あ。電源ごと切った」

 後ろから抱きしめられて動けない状態で電源オフにされたスマホは
私のカバンへ返される。それで終了なわけもなく。ギュッとされたまま、
 わざとらしいため息が耳元でしてくすぐったい。

「私は君との生活を考えているのに。本当によそ見が多い子だな」
「半分は創真さんのせい。今の九條さんですし」
「あいつ」
「……逃れられない運命を背負ってるんですから。私達」