「ごめんください」

 僕は恐る恐る木戸を開くと、店内に向かって声をかける。
 扉を開けると同時にひんやりとした空気がこちらへ漏れ出してきて、とても心地よかった。
 僕は涼やかな冷気に誘われるように店内へ足を踏み入れる。

 ドアを開けたときに、上部に取り付けられたドアベルが、カランカランと乾いた音を立てたこともあり、奥の方から長い黒髪の、美しい女性が顔を覗かせる。
 年のころは三十路(みそじ)手前ぐらいだろうか。
 僕より数歳程度年上に見える彼女は、落ち着いた大人の色香を感じさせる(なまめ)かしい人だった。

「はぁーい」
 彼女はそう答えると、僕を認めてにっこりと微笑んだ。

 清楚な白のワンピースの上に、ブラウンの胸当てエプロンを身につけた彼女は、僕をじっと見つめると、「涼しくなるアイテムをお探しですね?」と言った。