花々里(かがり)に「俺のこと、()()()()好きになれそうか?」と問いかけたとき、柄にもなく物凄く緊張してしまった。

 それまで何度も彼女に対して「嫁に来い」的なことは告げてきたし、何なら軽く騙して婚姻届に署名捺印だってさせた。

 なのに、だ。


 花々里と生活をともにして、彼女のことを知れば知るほど、花々里の世話を焼けば焼くほど。
 花々里にのめり込んでいく自分を感じて、どうしようもなく焦燥感が募った。


 花々里が絡むと些細なことで腹が立つし、逆にあの子がほんの少し俺に気がある素振りをしてくれただけで、やたらと嬉しくなってしまう。

 いつの間に、俺はこんなに花々里に惚れ込んでしまったんだろう。

 確かに、見舞いに行った折、病院で村陰(むらかげ)さんに成長したお嬢さんの写真を見せてもらった瞬間から、彼女のことは好みのど真ん中だと認識していたし、何としても手に入れたいと強く願いはした。

 けれど、だからといって、自分のペースを乱されるほどの激情に飲まれるとは思っていなかったんだ。


 なのに今は何て(ザマ)だろう。