数日後、、、
ついに決行の時を迎える。
「う〜〜〜」
牢屋の中で苦しむルーホー。



「まず、この鉄格子を破る事。」
「この格子は刃物とかでも切れない頑丈な作りらしくてな。まぁ根本刃物なんて持ち込めないけどな。」
ルーホーとウォルスが計画を練る。
地下5層で成るパンデモニウムの脱獄にはいくつもの難所があった。
その中でもこの牢屋は
上の階層の者ならば
仕事やスポーツ、食事などの際、
多少の出入りをするものの
ルーホーの居る最下層は
牢から一歩も出る事が許されない環境。
そこから難解だった。
「ぶっ壊すか、鍵を開けるかしかないけどな〜
鍵は看守が肌身離さず持ってやがるし、」
考え込むウォルス。すでに詰んでしまっているようは状況に、ルーホーが一筋の光を見出す。
「ウォルス!僕に考えがある。」



「どうした!!!?」
強い口調で駆け寄る看守。
牢の前まではやってくるが
警戒しているのか、近くまでは近付いかない。
近付いたら襲われる、猛獣のような扱い。
でも、寝転び、丸まりながら
遠目から見ても震えているように見える。
「さ、寒いんです。」
何もないスースーな牢屋とはいえ、
そこまで気温が低い、という、訳ではない。
「おい!大丈夫か!?」
恐らく体調でも崩したのだろう。
流石の大罪人といえどむざむざ見殺しにしたのでは
何か上から文句を言われるかもしれない。
「何だか熱があるかも、、、。」
「どうか薬を、、、いや、お湯とタオルだけでもいい。」
震える声で訴え掛けるルーホー。
『お湯とタオル、、、それなら』
看守はそれなら危険がないと判断すると、
「分かった!少し待っていろ!!」
急いでお湯のある給湯室に向かう。
かと、言ってこの階層の看守が居なくなった
タイミングで連絡を取り合って
すぐに別の看守が見張りにやってくる。
連携は完璧。

「ほら!お湯とタオルだ!」
看守が桶にタオルが浸かるほどのお湯と
ハンドタオルほどの大きさのタオルを牢の隙間から
中へ入れる。
「後は自分でなんとか出来るな!?」
「、、ありがとう。」
ルーホーは力なく答え弱々しく立ち上がり
桶を受け取る。
離れた距離からルーホーが牢にある寝床まで
桶を運んでいる姿を確認すると
看守は『よし!』
と、持ち場に戻った。


数分後、、
カランカラン。
何かが倒れる音がして看守が異変に気づく。
「なぜだ!!」
音がした牢の前に立つと看守は驚く。
それはルーホーの牢。牢の中は
「なぜ居ない!!?」
もぬけの殻。
牢の鍵を開け、中まで確認する。
しかし、どこにも、見当たらない。
「!!」
さらに看守は気づく。隣の牢も。
急いでその牢も確認する。
それはウォルスの牢。
「、、、居ない!!」
そして、看守の部屋にある連絡用の電話で
報告する。
「終層"無間"の囚人、ルーホー。ウォルス。2名が脱獄!!無間の囚人2名が脱獄!!」
それと同時に
ウィーン!ウィーン!
赤ランプとサイレンの音が監獄中に響き渡る。
慌ただしく入れ代わり立ち代わり走り回る看守達。
一気にパンデモニウムは戦々恐々と化す。