むか〜しむかし。

天上と地上が行き来をしている頃。

ひとりの天上の若い王子と
地上の美しい少女が恋をしました。

天上人の名はヘムル。
ヘムルは少女に会う為に何度も地上に通い愛を育みました。

そんなヘムルは王家の子。
将来は国を背負う事が約束されています。
その為、成人を迎えたら
親が決めた貴族との結婚が決められていました。


地上の少女の名はヨハネス。
街の役場で観光案内を担当していました。
各国の要人の街案内。ヘムスはそんな中の一人でした。
何も分からないヘムスはヨハネスの知識と
熱意、やさしさ。
誰にでも分け隔てない明るさにすぐに惹かれました。


ヘムルは天上で父である王に
何度もヨハネスの話をしました。
そんないい少女がいるのかと、王も
熱心に聞いてくれているように思えました。
しかし、結婚となれば話は別。
王は成人を迎える前に、
許嫁である貴族の娘と見合いの場を設けます。


そう、いくら話をした所で
ヨハネスの立場はどう考えても中の中。
ましてや地上人と言うことで
全く聞く耳も眼中にも無かったのです。


ヘムルは絶望をし
地上でヨハネスと暮らす決意をします。



そんな二人の関係を良く思わない人は
他にも居ました。
それは街の町長。
天上の王子が街に住むなど
街をいつ乗っ取られるか分からない。

ましてや天上人は異能を使う。
それは街の脅威にもなり得る。

ヘムルが国を出てきたと聞くと
それをいい事に
異能の化け物!と、街中に広め、
街から追い出されます。



ヨハネスから引き裂かれ、
途方にくれるヘムル。
そこへヨハネスが駆け寄ってきてくれました。
そうヨハネスも家を飛び出してきたのです。



二人はひっそりと森で暮らし出します。
誰にも認められない二人の関係。
それでも二人は幸せでした。



しかし、この件で
娘を拐われたヨハネスの父が激高。
街人と町長と共に
化け物狩りと称し、
森に火を放ち始めたました。


必死で火の手から逃れる二人。


命からがら炙り出されるように街に出てきた二人は
街が何者かによって襲撃にあっているのを目撃します。


それは風を使う異能者達。
ヘムルはそれがすぐ空の使いだと気付きました。
実は天上人も
王子を誘惑して取られた!
として、地上人を恨んでいました。


町長達が化け物狩りに気を取られている
その間に
街は天上人によって襲撃されていたのです。



化け物!と追いかけ回される自分。
地上では暮らせない。
かと、言って、天上では王と許嫁が待つ。
ヨハネスとは離れ離れ。
街との関係も断たれ
一生会えないだろう。


それなら!
「僕が君と君の街を救う!」
と、
ヘムルは空の使いと戦う事を決めました

天上人同士の戦いは凄まじいものがありました
風同士がぶつかり
大気が揺れ
衝撃波は雲を吹き飛ばし

それでも街への被害は最小限に抑え

ヘムルはなんとか天上人を追い返す事がで来ました。

初めは怖がって恐れていた街の人達も
街を守ってくれたその姿に
感謝をし、
ヘムルは街の英雄として崇められました。


そうして、
街人達に歓迎され暮らしだしたヘムルとヨハネス。

しかし、それも束の間、、、



「お〜〜い!河が決壊した!!急いで逃げろ!!」
街の上流を流れるライン川が氾濫したのです。

それはヘムルと天上人の戦いの余波からでした。
余波で崩れた天候は
上流で大量の雨を降らせ、
川の水を増量させました。


その川の流れは一気に街を飲み込みます。
なんとか
街人達はヘムルと街の屈強な男たちによって
全て無事に守ることができました。


しかし、失ってしまった町。
川の流れは完全に2つに別れてしまいました。

それを見てヘムルは思います。
『ああ、僕達の恋はなんて罪なものだったんだろう、、、』

思えば全ては二人の恋から始まったのです。

幸運にもヨハネスの周りには街人を救えるような
屈強な男たちが居ます。

彼女の周りはこの男たちが守ってくれる。
でも、
天の災害からは守る事が出来ない。
まだ追っ手も来るだろう。


そう思うとヨハネスの為に出来る事は一つしか浮かびませんでした。
「さよならです」
そうとだけ告げ、ヘムルは
地上を去りました。


『彼女の傷は
彼女の周りの誰かがきっと埋めてくれる。

僕は、、、

彼女がこれ以上何も失わないように
空を管理して
彼女を見守るだけだ。』



二人の道は
レク川、ワール川のように別れてしまいました。
でも
その想いは
きっと
ラインのように繋がっている事でしょう。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

こうして風職人という職業は生まれた。

その話は教訓のように空に伝えられ
天上人達はいつしか
地上との交わりは災いを呼ぶと、避けるようになった。

きっと、それは
ヘムルを地上に取られそうになったからという
嫉妬からだろう。

しかし、王になったヘムルは何も言えなかった、、、

自分のせいで街を失ったヨハネスの事を思うと
、、、

ただ見守る。
そして
いつか、世界の管理が整ったとき、、、

その時は
一緒に、、、