「おい!やべ〜ぞ!ビスル!これじゃあもうもたね〜!!」

陸から大分離れた沖合。
周りにだだっ広い海のみが広がる海原の中。
1隻の船が荒れ狂う海にもみくちゃにされながら漂う。
その船の中央で男達が必死で押さえているのは大きなマストの柱。
暴力的な風の影響で1本しかない大きなマストの柱にヒビが生え、今にも吹き飛ばされそうになっている。

「お前ら!泣き言は許さね〜!この帆が折れれば俺たちは全員海の藻屑だ!死んでも離すんじゃねぇ!!」
大きな声で威勢よく喝を入れるのは"ビスル"。
この船の船長で
ブルーの父親だ。

「全員で生きて帰るぞ!!!」
「あぁぁい!!」
息のあった掛け声で、全員で力いっぱい柱を支える。
刺さるような雨が身体に叩きつけられ体温をどんどん奪う。
腕も痺れる。
吹き荒れる風がマストを揺らし
その度に支える腕全体に痛みが走る。

それでも男達は
男の意地で柱を支え続けた。
「この嵐が去れば!マストも修復出来る!!
何とか耐えろ!!」


「いた!ブルーのお父さんの船だ!!」
広い海原の中に浮かぶ父の船をようやく発見したルーホー。
嵐の中必死でマストを支える男達の姿を見て
即座に状況は判断できた。
「頑張れ!!お父さん!!」
ルーホーは遠い空の上から届かない声で
必死で応援する事しか出来ない。


しかし一向に嵐の勢いはとどまる事を知らない。
街一番の腕っぷしが集まったような
漁船も、自然の猛威には為す術が無かった。


ガコン!
支えていた柱はついに音を立て
折れ曲がり
マストはルーホーの見ている前で海へと倒れていく。
「あっ!!!」
柱を支えていた男達はマストの重みで潰されそうになるも何とか柱の下敷きにならずに脱出。


「おい!お前ら全員無事か!!」
ビスルが全員の生存を確認する。
「、、、おう!、、、何とか生きてるぜ、、、」
全身ずぶ濡れの男達が疲れ切った様相で答えた。
ギーーっ!
そんな男達の足元が傾く。
おっと!
と、よろめく男達。
そう!倒れたマストの重みで
船全体が傾いていっているのだ。
「やべーー!!」
このままでは確実に転覆。
「お前ら!力いっぱいマストを押し出せ!!」
男達は最後の力を振り絞って大きな柱のマストを
押す。
「おりゃーー!!」
ザブーーン!
限界まで傾いた船体も何とか転覆する事なく立て直す。
「はぁ、、、はぁ、、、やったぜ、、」
男達は力尽きるように倒れ込んだ。


しかしマストを失った船は
無常にも荒波に飲まれるように
抵抗も出来ず
大海原へと消えていった、、、。