「、、、、。」
目を瞑ったままのブルーは痛みも衝撃も感じなかった。
もしかして、あのまま天国に、、、
そう感じるほど恐怖で頭も意識も
一瞬真っ白になった。
それでも、目を瞑る向こうではピューピューと
未だ風の音が聞こえる。
勇気を出して瞑った目を開けてみる。



そこには目の前に迫りくる竜巻。
しかし、竜巻はその歩みを止めその場で停止している。
「、、、、。」
なんだかその竜巻は拘束されて苦しそうな
感じでグネグネと揺らめいている。
「、、、ブルー、、、」
その竜巻から声が聞こえてくる。
「えっ?、、、」
よく見ると竜巻の中に人影が見える。


ブルーへ向けて踵を返した竜巻。
この距離。
ブルーを助けに行くにも間に合わない!
そう思ったルーホーは
咄嗟に竜巻の中に飛び込んだ!


竜巻の内部から動きを止めるルーホー。
しかしそれは自分の身を犠牲にする行為。
吹き荒れる突風に飛び込んだ際に
竜巻に含まれる小石が弾丸のようにぶち当たる。
当たった場所から血が流れ出る。


「、、、駄目じゃないか、、、こんな危ない所に来たら、、、」
弱々しい、けど優しい口調でブルーに語りかけるルーホー。

ブルーはその光景に涙を浮かべながら訴える。
「、、、やっと分かった、、、あなたはずっと見守っていてくれた、、、。」

「ふふっ」
嬉しくて笑顔になりながらも
ぐっと手足を踏ん張り
そちらには行かせない!!と懸命に耐えるルーホー。

「あなたは!、、、いつも私達の為に頑張ってくれていた、、、!」
ブルーは大粒の涙を流し崩れ落ちる。

その泣いたような声に
竜巻の向こうからでもその姿が想像がつく。
「、、、ブルー、、、もう一度、君のチューリップ畑が見たいな、、、。」
それを勇気付けるようにルーホーは言う。

その声はまるで
頭を撫でられているかのように優しく。
慰められるように涙は少しずつ止まる。
「、、、うん!、、、絶対見せるよ、、、」

しかし、
竜巻の風が
巻き込んだ葉や小石をナイフに変え、
まるでミキサーの中にいるかのように
ルーホーの身体を切り刻む。
「うっ、、、」
思わず崩れ落ちそうになる身体を
意地で持ち上げるルーホー。

外側からブルーもその声で異変に気づく。
「ルーホー!!」
涙を弾き飛ばしながら
「もう頑張らなくていい、、、だから!!」
ルーホーの心に伝わるように懸命に伝えた。
「ずっと、そばに、、、」


もうダメだ!
このままでは竜巻がブルーに!!
なんとか仁王立ちし最後の力を振り絞るルーホー。
「大丈夫だよ、、、ブルー。」
「僕は、、、ずっと君を見守っているよ。」
そして、
竜巻の横回転の風を吹き飛ばすように
思い切り上空へ
「空の上から、、、」
身体全体から風を吹かせた。
「だから笑って、、、」


ドーーン!
互いに抵抗しあった風が爆発するかのように
空へ解き放たれる。
天の雲には大きな穴が空き
暴力的な砂や石たちが
サラサラと降り注ぐ。


そこにはルーホーの姿は
跡形もなく消え
残るのは優しくブルーを包み込むような
優しい風だけが流れていた。
「ルーーーホーーー!!!!」





ルーホー。
彼が伝えた風車の技術は
後に干拓事業で国の発展に貢献し
100年以上経った今でも

"キンデンダルク・エルスハウトの風車網"

として、この地に伝えられている。