「みっちゃんは知ってる?清瀬の噂」
「え?……あー、うん」
それは、今まで誰とも関わってこなかったわたしですら聞いたことのあるもの。
────清瀬久遠は、掴めない。
その詳細をしっかり知っているわけではないけど、清瀬くんと一緒に過ごしてきて少しわかってきた気がする。
掴めない、というか、よくわかんない。それが清瀬くん。
「まぁ、噂ってほどの噂じゃないけどね。清瀬って、男友達にすら何も言わずに消えたりするし。まして女子なら、なおさら」
「え、」
「みっちゃんだけなんだよ。清瀬が女子って存在に普通に個人で話すの」
優しい顔をして、千尋ちゃんは言う。
いや、えっと。
それはね、千尋ちゃん、違うんだよ。
説明しようにも、この場がガヤガヤしすぎていて話せる状況じゃない。
でも、違う。違うよ。
清瀬くんがわたしに構ってくれてるのは、わたしのアキちゃんの長すぎる片想いを見兼ねたから。
かれこれ約10年、3回フラれても諦められないどうしようもないわたしに、彼がただ興味を持ったから。



