「あ、あと」

「?」


ぐいっと顔を近づけてきた清瀬くんが、わたしの口元に人差し指を当てる。


「この場所、誰にも教えたらダメだからな」

「……っ!」


もちろんオトモダチにも、なんて言われても、今はそれどころじゃない。


唇に、指が、ふれ、触れて……!?


一瞬でパニックに陥ったわたしは、きっと顔は真っ赤。


絶対にわかっているはずなのに、清瀬くんはさっきとは違って何故か表情を崩さない。

真っ直ぐに見つめられた瞳の奥が、わたしだけを映しているような気がするけれど。



……なに、考えてるのかわかんない……。


いつも笑っている清瀬くんのこんなふとした大人な顔は、初めて見た。



……と。


「……美瑚の唇、柔らかいね」

「なっ……!」


いつものような楽しそうな笑顔に切り替わったものだから、もう余計に何を考えてるのかわからない。