キミは掴めない。


***


「大変です、清瀬くん」

「うん?どしたの」

「千尋ちゃんが、いい人すぎる……」


千尋ちゃんと晴れてお友達になれてから、約1週間。


ついに喜びを我慢できなくなったわたしは、清瀬くんにこの気持ちを聞いてもらおうとある場所にやってきた。


本を読んでいたらしい清瀬くんが、パタンとそれを閉じてわたしを見てクスリと笑う。


「今まで来なかったのに急に来たと思えば、手塚の話ね」


こっちにおいで、と手招きされたのは、清瀬くんの隣。

お言葉に甘えてちょこんと窓辺に腰掛けると、「で?」と優しく声をかけられた。


ここは、3階。
この校舎の中で最も玄関から遠い場所。
今は誰にも使われていない、旧音楽室。


今まで何度かおいでと誘われていたけど、わたしは今日、初めてここにやってきた。