「美瑚」
不意に背後から名前を呼ばれて、尋常じゃないくらいに肩が跳ね上がった。
突然のことでびっくりしたのもあるけど、そうじゃなくて。
「ちょっと、こっち」
「……き、清瀬くん……何故ここに」
窓側の壁にもたれかかるようにして立っていたその人───清瀬くんは、さっきのアキちゃんよりもさらに呆れた顔でわたしを見据えていた。
すぐ近くの空き教室に連れられたかと思えば、しばらくの沈黙。
「な、なんでしょう……?」
「さぁ?逆に、なんだと思う?」
「………」
真っ直ぐに見つめられた視線を外す勇気は、いまのわたしにはなかった。
たぶん……清瀬くんの言いたいことはわかっている、と思う。