「変わりは、したい」
いつまでもアキちゃんを追いかけているだけじゃ、ずっとわたしは前に進めずにこのままだと思うから。
「……初恋、諦める」
「ん。よく言った」
カタン、と、清瀬くんが椅子から立ち上がった。
まっすぐ伸びてきた手が、わたしの頭を撫でる。
初めてわたしに触れた清瀬くんのその手は、アキちゃんよりもなんだか少し大きい気がした。
「じゃあ、まず1つ目の目標。"初恋を諦めよう"、な?」
「そのまんま……」
「ストレートな目標のが分かりやすくていいだろ」
フッと優しく笑った清瀬くんの表情が、なんだかとっても柔らかくて。
そういえば、と。
わたしはふとひとつの噂話を思い出した。
深い意味もよくわからない、その小さな噂。
『清瀬久遠は、掴めない』
「1年後が楽しみだな」
そう言って笑った彼のその笑顔を、わたしは信じてみたいと思った。