「優菜」
 聞き覚えのある声。松井里玖だ。

『最悪。なんで、日曜日までこいつを会わなきゃいけないの?』
聞こえなかった振りして、行こうとした。

「待って。」
腕を捕まえた。
「今、気づいたのに逃げようとした?」
「いえ、そんなことは・・・。」
「今帰り?今日は撮影終わったの?」
「そう。なんでこんなとこいるの?」
「俺、あそこの塾に通ってるんだわ。」
納得した。それで、Aスタジオから出てくるの見られたのだ。

「俺も、今日、塾終わり。
 無視しようとした罰。今から俺とデートしろ。」
「え?」
「逆らえないだろ?行くよ。」
手を繋がれた。
「ちょっと、手離して。」
「いや。デートだから繋ぐの当然だろ?」
諦めた。
「で、どこ行くの?」
「カラオケ行こうよ。」

カラオケに行った。
2人で、それぞれ歌った。
カラオケは久しぶりだった。
地元の友達と時々行く程度。最近、撮影忙しくて行けていなかった。
楽しかった。
「優菜。歌うまいな。」
「ありがとう。」
照れた。