「ただ、女の子と夕飯食べただけだよ」 わたしの冗談にやっと口を開いてくれる。 「紬さんに黙ったまま行ったの?」 「ああー。偶然、同じ店で一緒になって…」 「嘘ばっかり、どこの誰と?」 一瞬、兄は言うべきかどうか迷っているのが分かる。 「それが、今度店に入った女の子や」 店と言うのは、父親がやっている家業の和菓子屋のこと。 「ああーあの可愛い凉子ちゃん」 「おい、冷やかすなって」 お兄ちゃんも面食いだと、分かってしまう。