言い訳かも知れないけれど、元々、美しい金沢の街が好きだったのかも。
我が家は両親とお兄ちゃんとわたしの四人家族。娘はひとりだけ。

本当は都会生活への冒険もしたかった。
心残りが少しだけあるけど、まして遥か彼方のアメリカなんて行けやしない。
父さん寂しがりやだし。

地元の短大を卒業後、自宅近くにある兼六園近くのホテルで仕事をしている。
優しい父親と母さんを故郷に残して遠くにひとりだけ行くことなんか出来ない。

一雄からは何度か手紙が届き、数年で戻れるという返事もあったけど……
現実という冷たい夢の中に儚く消えてしまう。
それがわたしたちの運命だと諦めてゆく。