「ところで、今日はどうしてここに来られたの?」
「明日、10年ぶりに帰る実家に持っていく手土産の菓子を探していて」
「それなら、やっぱり、これが一番。愛が詰まってるから。その代わりにわたしと同じように賞味期限が短いですけどね。花の命は短くて……」
男は首を横に振りながら、言葉にしてくる。
「ゆき乃さんに限ってそんなことはないよ」
こうした可笑しいやり取りが夢ごこちで2人の間で続いてゆく。
暫くすると、1か月前に居酒屋で見たことを思い出してしまう。
あの時、綺麗な女性が一緒であった。
そうならば、目の前の男性とは縁がないことになる。

