「これって、どんな味がするのですか?」 ケース越しに和菓子を指差して、問いかけてきた。 男は返事を待ち、わたしの顔を見つめて、動揺した様子。 「これ、ひとひら餅。白玉粉の求肥に甘ったるい愛の餡が入っているの」 「ゆき乃さん」 「政孝さん、本当にごめんなさい。恋人未満にもなれなくて」 彼は笑っている。怒っていないのが分かった。