「ちょっと嫌なことあって、忘れたくてさあ」 まだ、男と会って2時間も経っていない。 けれど、わたしの心は少しだけ揺らいでいる。 もう少しだけでも、 彼のことを知りたくなっている。 男から漂う匂いが好きだった。 それは、香水ではない。 何とも言えない優しい雰囲気。 出会いなんかにカッコつけなくもいいんじゃない。 もっと、正直になりなよ。 そう囁いてくるもう一人の自分が心の中にいた。