「今日は時間を頂いて有り難う。でも、堅苦しい挨拶はもうやめよう」 驚いているわたしを察したようで、言葉を返してくれる。 「ああーやっぱり、さっきの印象がよほど悪かったのかなあ。お見合いにダウンを着て、それにこの黒ぶちメガネ。普段はメガネかけてるんだ。カッコつけても俺なんか変わらん」 「そうじゃないんです。違うって逆ですよ」 「えっ、嘘。冗談でしょう」 男はわたしの目を優しく見ながら、不思議そうな顔をしている。