「いえ」

「あっそうだ。図書委員の菫ちゃんに、今度おすすめの本紹介してもらおうかな?」

「えっ」

さっきの先輩の「好きな人」の話なんてもうどこかへ飛んでいき、ただただテンションが上がった。

美化委員のお手伝い以外で先輩とかかわれるなんて!こんなに嬉しいことはない。

「ぜひ、紹介させてください!先輩におすすめの本、沢山ありますよ。花の種類がいっぱい出てくる小説とか」

そんなことではしゃぐから、先輩は小さな子どもを見守る保護者のような優しい目で私を見ていた。

そして、優しく微笑んでくれる。

私はそんな日常のひとときが、たまらなく幸せだったんだ。

たわいもない会話だけれど、一言一句、忘れることができなかった。