全部聞き終えた先輩は、私のことを優しく抱きしめてくれた。

ふわっといい香りが鼻をかすめる。

夏のポロシャツから香ったあの柔軟剤の匂いだった。


『……一度でいいから、南先輩に抱きしめてもらえたいなぁ』

『そうしたら、涙が出ちゃうほど幸せだなぁ』

今年の夏、私はこんなことを思ってた。

夢が現実になった。瞳が潤んでいくのがわかった。

……これからは一度じゃなくて、何度だって抱きしめてもらえるんだね。