「ほら、おいで」



なに言ってんだって言われるのは当然だ。

約束をやぶったうえに、こんなわがままを言うなんて、きっと呆れてしまうだろう。



「…なに、…言ってるのよ」



立夏の母さんの声は震えていた。

声が震えるほど怒っているんだ、きっと。

意味もないのに、思わずぎゅっと目を閉じてしまう。



「…あなたと立夏が無事なら、母ちゃんはそれでいいのよ…あぁ、よかった…ふたりになにかあったんじゃないかって、そう思ったのよ」



一瞬、聞いた言葉を疑った。

幻聴なんじゃないかと思った。

だって…、


どうして……?



「……どう…して…、

……俺を責めないんですか」



約束の時間が過ぎているのに、立夏の母さんは、電話いっぽんかけてこなかった。

立夏にあんなことがあって、きっと敏感になっているはずなのに、どうして…、



「織くんを、信じているからよ」