「ほら、おいで」



「え?なんで笑うの?」


「……寒がりのくせに」


「織が凍っちゃったらどうするんだよっ」


肘でコツンッと小突いてみるけれど、あまりダメージはないらしい。

織はまだ肩を震わせている。



「…体温高いから冬は寒くねーんだよ」


「あ!織、自分が体温高いからって、冬をなめちゃいかんよ。それに冬が寒くないって、そんなこと言うの織くらいだよ」


私がそう言った後、しばらくの沈黙が流れた。

返事が返ってこないことに不思議に思った私は、織の顔を覗き込む。


さっきまで肩を震わせて笑っていた織は、もういつもの表情に戻っていた。



「……そうかも」



また私に上着を黙ってかけてから、そして静かにそう呟いた。


あれ?さっきまで楽しそうにしてたのに。

もしかしてやっぱり、さっきはあんなに強がってたけど寒くなってきたんじゃ…



「こんな上着のかけあいっこしてないで、もうひとつ持ってきたらいいんだよ」


そう言って織に背中を向ける。

部屋を見渡していると、ちょうどいいサイズのブランケットが目にうつって指をさす。


「ねぇ、あそこにあるブランケット持ってきてもいい?」


織からの返事はない。


さっきまで織が使っていたのだろうか、そのままベッドから床に流れるようにして落ちているそれを、返事を待たずに取りに行こうと足を踏み出したときだった。



「立夏、」



久しぶりに、織が私の名前を呼んだのは。