「ほら、おいで」



そう願ったとき、白い雪が目の前を通り過ぎていった。

空はすっかり暗くなっていて、気を抜けばその暗闇に呑み込まれてしまいそうだ。

握っている手が小さく震えている。

夜が怖いのだろうか。



「……震えてる」



無意識に、そんな言葉がこぼれた。

もしかしたら寒いのだろうか。




「ちげえしっ、それはお兄ちゃん」

「は……」



俺…?

そっと、手を繋いでいない方の手に視線を向ける。


言った通り、

俺の手は情けないほどに震えていた。


なんでだろう。

そんなもの、考えなくても分かっている。



「…あのお姉ちゃんが戻ってくるまで、俺がずっと握っててやる」



小さな手が、さっきよりもぎゅっと俺の手を強く握ってくれる。

心が苦しいくらいに、あたたかった。



「っ……ありがとう」