_『メリークリスマス…立夏』
キラキラ光るツリーの前で、立夏の頬に初めて触れた。
冷たくて、少し赤い。
動揺したのか、目が泳いでいたけれど、すぐにいつものように笑ってくれた。
『…メリークリスマス…おりっ』
照れ隠しのように、俺の名前を呼ぶ立夏。
恋人として名前を呼ばれたのは、それが最後だった。
帰り際、もう暗かったので、家までおくっていくと言った俺に、立夏は首を横に振った。
_『すぐそこなんだから、ひとりで帰れるよ』
『あははっ…そんなに心配しなくても大丈夫、もう、ほんとうに織は心配性だなぁ』
あのとき、無理やりにでも一緒に帰っていれば、なにかが違っていた?
1分でもはやく帰っていれば。
あの日、一年前のクリスマスイブに、大きな事故が起きた。
ただ帰り道を歩いていた立夏の目の前で、人が倒れて、それからサイレンの音が鳴って、たくさんの悲しみの声と、動揺の声、
いったい、どれほど怖かっただろう。



