しばらくして、カチッとドライヤーの電源が切れる音がした。
…終わった?
背もたれに後頭部をのせて、織の様子をうかがってみる。
私の視線に気がついたらしい織は、「あぶねぇ」と呟いて、私の後頭部を片手で支えた。
「乾かしてくれてありがと」
静かに頷いた織は、ドライヤーのコンセントを抜いて、洗面所に歩いていった。
…髪かわかしてもらうの、きもちよかった
あたたかくて、ポカポカする。
洗面所からリビングに戻ってきた織は、なぜかもう一度わたしの後ろに立った。
…ん?
「…手グシでいい?」
「…へ?」
「髪」
織は私の髪に優しく触れて、それから上から下へと動かした。
それを何度も、何度もしてくれる。
指先から伝わってくる優しさは、他の誰かでは感じることのできない温もりだ。
気を抜くと頬がまた熱くなってくる。
気を紛らわすために、なにか面白い話題はないだろうか。
「あの…ね、織もたまには、一緒にふざけたりしてくれるんだね」