…あ…あれ?

織を驚かしたら、すぐに痛いふりをやめようと思っていたのに…タイミング逃しちゃった…


だって織、本気で心配してくれてるんだもん。

普通は少しくらい疑うのに。

ピュアすぎるよ〜〜

自然と握られている両手が温かい。

嘘がばれないように顔を逸していたのに、織がずっと覗き込んでくるから、ついに目が合ってしまった。



「………」



目が合うと、織はすぐに私の手を離した。

そして目を細めて、私をじーっと見つめてくる。


…どうやら、作戦がバレたようです


ほっと安心したのか、それとも呆れてしまったのか、織は小さく息を吐いた。


…怒った…?


不安になって、自然と織の行動を目で追ってしまう。



「…ほら、」



私の視線に気がついた織は、手に持っていたドライヤーのコンセントをさして、ソファの背もたれを、ぽんぽん、と2回ほど軽くたたいた。

その動作はとても甘く、優しい。



「おいで」



織にその言葉を言われると、頬が熱くなる。

思わず甘えてしまう。

そっと踏み出した一歩。

そのまま、言われるがままソファに腰かけた。



「……乾かしてくれるの?」

「……寒がりのくせに」



会話になっていない、わたしたちの会話。

私の髪に触れる織の手は、優しくて、まるで頭を撫でられているみたいだ。



「…くふふっ…」



くすぐったくて、ドキドキする。


…なぁんだ、織ぜんぜん怒ってないや