「ほら、おいで」




「織さん怒ってるっ?」

「………」

「無視はいかんって先生に教わったやろぉ〜」



私が走って逃げれば、同じように織も走って追いかけてくる。

ドタバタ、ドタバタ。

走っているうちに、頭の上にのってけていたタオルが流れるように床に落ちた。

それでも、かわまず走った。



「はぁっ……はぁっ…あははっ…」



走ってるうちに楽しくなってしまって、思わず笑みが溢れた。

けれどしばらくすると、足音が一人分だけになっていることに気がつく。


…あれ?…なんか静かだ


不思議に思って後ろを振り返ると、織が床に手をついて、肩で息をしている姿が視界に入って驚いた。



「ひゃーーっ」

織が倒れとる!!


慌てて駆け寄って、織の背中をさする。



「おり…大丈夫?ごめん、織」

「…ぜぇ……はぁ……け、」

「ん?え?なんて?」

「髪の毛…かわかせ……」



パタッ

まるで最後のメッセージのようにそう言い残して、織はパタリと力尽きてしまった。