「ほら、おいで」




「ねぇ、はやくうがいしなよっ」

「ごろごろ、ぺって歯みがきの仕方わすれちゃったの?ねぇっ」



織を洗面台の近くにグイグイおして、慌てて蛇口をひねる。

どうして歯みがきで溺れてるの?!

うがいをし始めた織にホッとしながらも、歯みがきで溺れる幼なじみを目撃した動揺で、まだ心臓がドキドキしている。


…そんなヨボヨボで、おじいちゃんになったら、どうやって歯みがきするんだよっ


心の中でツッコミを入れていると、うがいを終えたらしい織がこちらを振り向いた。



「…………」



ただ、じーっとこちらを見つめるだけで、何も言わない。

どうしてか眉間にシワが寄っていて、不機嫌な気がする。



「……立夏がどいてくれねぇから」



…どいてくれねぇ…?

そう言えば、なにかモゴモゴ言ってたよね…



「あれ、どいてって言ってたの?」



あぁっ、そっか

ふたり並んで歯みがきしてたけど、洗面台の前に立っていたのは私だから、私がどかなきゃ織はうがいできなかったんだ。



「あはっ…あはははっ」



どうしよう、私が悪いのに面白くて笑っちゃう

だって織の服に歯磨き粉ついちゃってるし、珍しくムッとした顔してるし、ぜんぶ可愛い。