___
__
「ん〜…」
包丁がリズムよくまな板にあたる音がする。
それから、あたたかい匂い。
きっと母ちゃんが朝ごはんを作ってる音だ。
何度かゆっくり瞬きをして、それからやっと視界がクリアになった。
…ん?
家こんなきれいだったっけ…
もっと汚かったような…
いつもいつも母ちゃんに、『あんた、片付けなさぁぁいっ』って、怒られるくらいには汚いはずなのに。
全体的に整理整頓されていて、白で統一された部屋。
うん!
ここ、私の家じゃない!!
そうだ…わたし母ちゃんと喧嘩して家出したんだった…
母ちゃんは元気だろうか。
でも、母ちゃんなら父ちゃんがいるから、きっと大丈夫だよね
床に寝転がっていたものの、また白いブランケットが、しっかり首までかけられていた。
音がするキッチンへと視線を向けると、そこには織の後ろ姿があった。
「おりっ」
名前を呼ぶと、織はこちらに振り向いてくれた。
「おはようっ」
思いきってそう言えば、織は眉を下げて、表情をやわらげる。
「……うん、おはよ」
ドキッ…
…あれ?…なんか…
……学校で言い合うのと全然ちがう
本当に寝起きで、ふたりっきりで、織が朝ごはんを作ってる。
なんだこれ…
……同棲生活みたいでドキドキするやん〜〜っ