「ほら、おいで」



そんな幼なじみの口癖に、私はいつも甘えてしまう。



°❆ °
° °


「んふふ…あったかーい」


家に入ってすぐ、織はわたしを毛布でぐるぐる巻きにした。


白色で統一された家の中は、相変わらず物が少ない。


何事にもあまり興味を示そうとしない、織らしいスタイル。


織は、私をぐるぐる巻きにしたかと思えば、次はあたたかいミルクを持ってきてくれた。



「………ん」

「わぁ…、ありがと」



突然きたのに、怒ったりしない。

何も訊いてこない。


他の人よりは無口な方で、それに、穏やかで落ち着いている。


高校1年生の私と同い年なのに、まるで年上のように思う。



「はっくしゅっ」


ぶるる、と寒気がしたかと思えば、くしゃみが出た。


すると織は、ずれたメガネを人差し指でなおしながら、私に視線をやった。



「…寒いの?」

「ううん、あったかい」


「手…」


そう言われて自分の手に視線を向けてみれば、それは小刻みに震えていた。


「あぁ…ふへへ」


心配かけさせないようにと、手をグーパーさせて、笑って見せる。


けれども織は、読んでいた本を机の上に置いて、こっちに歩いてくる。