「ほら、おいで」




『…ふふっ…』


『じゃぁ、お願いしようかな?』



少し掠れた声で、立夏の母さんはそう言ってくれた。



『えっ』



あまりにも、あっさりだったので、すぐには言葉が見つからなかった。



『あら?!本気じゃなかったの〜?あははっ』

『い、いえ………本気、です』

『でもこんな夜に心配だなぁ、織くん可愛らしいから誘拐されたらどうしよう』


…娘の心配じゃなくて、俺の心配かよ


心の中でツッコミを入れて、それから自然と頬がゆるんだ。



『なんか武器になるようなもの、持っていきなさいねっ』

『ぶ…ぶき…?』

『そうよ〜?あぁ、あれね、傘とか…織くんあれ持っていきなさい、フライパン?』

『ふっ………くくっ……』



…もう無理、おもしれぇ

立夏の面白さはこの人ゆずりか


明るい声とテンポにのせられて、どんどん会話が進んでゆく。

だからなのだろうか。

普段なら言わないようなことを、あっさりと言ってしまったのは。



『もしよければ…なんですけど、もう暗いですし、今日は家に泊めてもいいですか?』

『あした、明るいうちにおくっていくんで』