「ほら、おいで」



それまるで誰かの涙のように、悲しく地面を濡らしていく。


俺の足元におちた雪が、じわりと、一瞬で形をなくして消えてしまった。


バイトで疲れた足は、いつも重たくて重たくて仕方ない。

それでも再び歩き始める。


それは次第にはやくなっていき、だんだん呼吸が浅くなった。



『…っ……はぁっ……はぁっ…』



不器用な走り方だったと思う。

体育の授業以外、運動なんてしなかったし、むしろ嫌いだし、苦手だし。


持久走なんか大嫌いだった。


『っ…はぁっ…はぁっ…』


何度も転びそうになりながら、何度も足がもつれそうになりながら走る。



『はぁっ…はぁっ………はぁー……』



遠くからでも分かる。

通話ボタンをおす手は、震えていた。



『…っ…俺の家の前に…います』



雰囲気もカタチも全て、苦しいほどに知っている。



『………っ……ほんっとにあの子はっ……っ…よかったっ…っ』



立夏の母さんは安心したように、その時やっと涙した。